アロマな君に恋をして
しばらくすると人の心音がとくとくと聞こえることに気づき、ようやくここが彼の腕の中だと認識した私。
ええと……私は今、麦くんに抱き締められていて、それで彼は友達ポジションが無理って……
「え、ど、どうして……!?」
我に返った私はそう聞きながら脱出を試みたけど、背中に回された腕の力が強くてびくともしない。
「なずなさんが可愛いから」
「か……かわっ」
どうして今のやり取りでそういうことになるの?
むしろ逆だと思うんですけど……
それに可愛いだなんて……一体いつ言われたのが最後だっただろう。
そんなわけないけど、100年ぶりに言われたかのごとく恥ずかしい。
しばらくしてゆるりと腕が解かれると、麦くんはいつものように無邪気に笑って言った。
「……真っ赤です、なずなさん」
「だ……だってしょうがないじゃない!久しぶりなの!そんな風に言ってもらうのも、男の人に抱き締められるのも」
「恋をするのも?」
「そうよ!」
……って。
私……今何を言った?