アロマな君に恋をして

「……なずなさん、今のって」

「ちっ……違うの!今のはズルいわ、誘導尋問よ!」


慌てて否定してみたけど……そんな私を見てクスクス笑う麦くんの様子を見る限り、効果は薄そうだった。


勢いに任せてなんてことを言ってしまったんだろう……

恋なんてしてない。絶対してない。してたまるもんですか……


「認めたくないならそれでもいいです。でも、俺は今の発言をポジティブな方向に受け取っておきますね。正直、すごい嬉しかったんで」

「…………」


麦くん……どうしてあなたはそんなに純粋なの……?

そんなに純粋なあなたが、どうして捻くれまくっている私なんかのこと……


廊下を歩く背中に問いかけても、当然答えは返って来ない。

リビングに着くと上着を脱いだ彼はすぐに食事の準備を始め、私はこの間のようにソファに座りながら彼の姿をぼんやりと眺めた。


麦くんは背が高くて細い体だけれど、肘まで捲ったシャツから覗く腕は、意外とたくましくて骨ばってて、男の子らしい。

その手で包丁を掴んで丁寧に大根のかつら剥きなんかされてしまったら、もう見惚れるしかないじゃない……


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