アロマな君に恋をして
「――なずなさん、手を出して?」
少し迷ってから、私は片方の手を麦くんの前に差し出した。
麦くんは自分の手で温めていたオイルを私の手のひらに広げて、指先から手首の方へ向かって、ゆっくりゆっくりさすっていく。
「……あったかいね」
「次はちょっと痛いかもです」
手の甲の、指と指の間の溝を、麦くんの大きな親指がぐっと押す。
「――――いった!」
「……ココが痛いのは、ストレスのたまってる証拠です」
「ああ……さっきイライラしたせいかな……」
「さっき?」
「ほら、歩未さんに……って違う!違う違う!!ただ疲れてるのよ!仕事で!」
「あはは、そんなに必死にならなくてもいいのに」
楽しそうに、けれど丁寧に私の手をマッサージした麦くん。
余分なオイルをタオルで拭いつやつやになった両手からはレモングラスの香りがして、心がほっと和んだ。