アロマな君に恋をして

腕を組み、うーんと唸り始めてしまった麦くん。

私を泊まらせることを諦めれば済む話なのに、それをしない彼の気持ちを少し嬉しく思う自分がいる。


ああ、これは本当に……

私、ヤバイかもしれない。

どうしよう、きっとまた傷つくことになるのに……



「買いに行く……って言っても、今やってるお店なんてどこにもないしな……」


……麦くん、まだ悩んでる。

目を閉じて天井を仰ぐ横顔は、解けないなぞなぞと必死で格闘する子どもみたいで可愛い。

そういう人が隣にいて自分が答えを知ってる場合、それを教えてあげたくなっちゃうのが人の性(さが)ってものだ。


決して、私が泊まりたいからってわけじゃない。私は心の中でそんな前置きを呟いてから口を開いた。



「麦くんの服を貸して?」


甘く媚を売るような声にだけはならないように、私はさっぱりとした口調で言った。

隣で“考える人”みたいになっていた彼が、目を丸くして私を見る。


「え……たぶん、“俺くさい”ですよ?だったらまだアユ達にいつも貸してる服の方が……」

「それはなんとなく嫌なの。麦くんくさい服でいいから貸して?」

「……嫉妬ですか?」

「な、なんとなく嫌って言っただけでしょ!」


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