アロマな君に恋をして
暗い部屋が、気まずい沈黙に包まれる。
そんな中で自分の息づかいと、怖がりな心臓の震える音がやけに大きく聞こえる。
麦くんはしばらく何か考えているように黙っていたけれど、やがて少し不機嫌そうな表情になって言った。
「……なんで傷つくこと前提なんですか」
「え……?」
「俺、そんなにやなやつに見えますか?」
「そういう訳じゃ……」
……どう説明したらいいんだろう。麦くんが悪いんじゃなくて、完全に私の気持ちの問題だから……うまい言葉が見つからない。
「俺はなずなさんのことが好きです」
――やめて。
そんなに真っ直ぐ心に飛び込んでこないで。そんなに綺麗な瞳で私を見ないで。
思わず顔を背けようとしたら、今まで私の手をずっと握っていた麦くんの手が布団から出てきて、私の顔を固定してしまう。
心を裸にするような彼の視線から、逃れられないように。