アロマな君に恋をして
あぁもう……この子はどれだけ私に恥ずかしい思いをさせたいんだろう。
私は麦くんの服に顔をくっつけながら、蚊の泣くような声で呟く。
「…………、き」
「なずなさん……たぶん今の、人間の何倍も耳のいい犬でも聞こえません。……もう一回」
……麦くんの意地悪。私の気持ちは知ってるくせに。もういい、やけくそだ。
「――すき!」
叫ぶように言ってから麦くんを睨むと、彼は満足げに目を細めていて……
「俺もです」
そう言って、私の背中に回した腕に力を込めて、痛いほど強く抱き締めてきた。
今までずっと避けてきた“恋”は、思ってたよりずっと甘く柔らかい気持ちで。
自覚した途端に香り立つ、まるでトップノートの精油。
ただ、恋する気持ちは香りと違ってはかなく消えることなく……むしろどんどん強くなる一方だ。
麦くんが、好き。
大好き。
今度こそ、この大切な恋が壊れませんように――。