アロマな君に恋をして

朝、起きてみると隣に麦くんはいなかった。

リビングに行ってもその姿はなくて、ダイニングテーブルの上にラップのかかった朝ご飯と鍵、そして小さなメモ紙があった。


『なずなさん、おはよう。行きたくないけど仕事に行ってきます。よかったらご飯食べてください。それからお風呂も追い焚きしておいたので、ゆっくり入って下さいね。
鍵は閉めたらポストにお願いします。

追伸。行ってらっしゃいのキス、勝手にもらっちゃいました』


最後の一行を読んだ瞬間、ぼっと顔が熱くなった。

だって、それって出掛ける前にわざわざ私のところへ来て、キス……したってことよね。

うわぁ、うわぁ!!

脳内で勝手にその映像が再生され、恥ずかしさから手の中のメモをぎゅっと握りつぶしてしまう。


「……顔合わせずに済んでよかった、かも」


昨夜のやりとりだけでドキドキの許容量はとっくにオーバーしてる。

今どき女子高生だってキスくらいじゃ騒がないのかもしれないけど、私にとっては大事件。

ちょっと、心を落ち着かせる時間が欲しい……


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