アロマな君に恋をして
「……なかなか濃厚な匂いだね。なるほど、確かに効きそうな感じがする」
「ええ。両方とも恋人同士が距離を縮めるのに有効な精油です。この二つを使って芳香浴をすれば、キャンドルやライトの灯りとともに素敵なムードを演出してくれるはずです。
……ですが結構特徴のある香りなので、好き嫌いがあると思うんです。その女性の好みがわかれば一番いいんですけど……」
「……店員さんは、この香り好き?」
「え……はい、まぁ。でも、私はあまり嫌いな香りというものがないので、好みを聞いても参考には……」
この職業に就いてるくらいだから、私はどの精油の香りもそれぞれ好きだ。
そんな私の意見が役に立つはずないのに……男性は笑みを深めてこんなことを言う。
「じゃあ、これを包んでもらおう」
「え、あの」
「贈り物の包装も頼めるかな?」
「……かしこまりました」
なんていうか、この人、一見物腰は柔らかいのに有無を言わせない迫力がある。
カッコいいし背も高いけど、私の好みじゃないな。そう思いながら頭に浮かぶのはやっぱり麦くんの可愛い笑顔。
……ってダメダメ、ラッピングに集中しなくちゃ。
私は長い脚で店内をゆっくり見て回る彼から視線を外し、手元を見る。
ペーパークッションを敷いた小さなカゴに、小瓶を二つとアロマテラピーの楽しみ方が書かれた小さな冊子を添えて、透明なセロファンで包む。
それをギフト用の袋に入れてリボンで口を閉じれば完成だ。