アロマな君に恋をして
「……冗談じゃなかったんだけどな」
独り言のように呟いて、オーナーは髪をかきあげた。
……今のは聞かなかったことにしよう。冗談であろうとなかろうと、オーナーとどうにかなる気なんて私にはないんだから。
「ま、いいや。とりあえずこれはきみにあげる。彼氏いるならなおさら、これ使ったら夜が楽しいんじゃない?」
「オーナー……それセクハラです」
「あはは、ごめんごめん。でもそんなに過剰に反応するってことは、もしかして上手くいってない?」
ごめんと言いながら、オーナーはセクハラ発言を止める気がないらしい。
愛想笑いでごまかせばいいのだろうか。でも、私と麦くんが上手くいってないと誤解されるのも嫌だ。
「……彼とはちゃんと上手くいってます」
「それは残念。彼、どんな人?」
「私にはもったいないくらい優しくて素敵な人です。料理も得意だし」
「夜の方は?」
「それは、まだ……」
そこまで言ってしまってからはっとしてオーナーの顔を見た。
“いいこと聞いちゃった”っていう、憎たらしい笑顔を貼りつけて私を見てる。
私のばか……上手くいってるというなら、まだ彼と寝てないってことは隠しておくべきだったのに!