アロマな君に恋をして

案の定、オーナーはこんな発言で私を攻撃してきた。


「一度も身体を重ねないでよく上手くいってるなんて言えたもんだね。」

「そ……そんなの人それぞれのペースってものがありますから!」


なんなのこの人?男女関係は身体がすべてだとでも思ってるの?

オーナーがそう思うのは自由だけど、他人にまでその考えを強要するのはやめて欲しい。


「チャンスがないわけじゃないんでしょ?」

「それはそうですけど……」

「やっぱり。その彼きみに本気じゃないんじゃないの?男ならお互いの想いが通じたその日に相手の女性を抱きたいものだけどね」


――え。そうなの?

……いやいや、真に受けちゃだめだ。オーナーと麦くんは全然違う。

一瞬だけよぎった不安を打ち消すように、私はオーナーを睨んで言う。


「オーナーの考えが世の男性を代表するものだとは思えません」

「……いいねその目。勝気な女性は嫌いじゃないよ」


……人の話、全然聞いてないし。


「もういい加減ふざけるのはやめてください!今日は仕事の話をしに来たんじゃないんですか?」

「――あ。そうだった。忘れるところだったよ、ありがとう。緒方さんの所へ案内してもらえるかな?」

「………………こちらです」


低ーい声で返事をして、私はオーナーに背を向けた。


後ろでコツ、と木製の床を鳴らすオーナーの革靴は、接客中に見たところ新品みたいにぴかぴかで、おそらくブランドもの。

顔よしスタイルよし、お金があって口もうまくて、きっと女性には不自由してないはずなのに、なんで私のことなんかからかうんだか……


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