アロマな君に恋をして

自然とこぼれる笑みをそのままにして店に戻ったら、オーナーと緒方さんが二人とも私をじっと見ていたから首を傾げた。


「……なんでしょう?」

「楽しそうだなーと思って。仕事」


オーナーが微笑みながら言う。


「悪いですか?」


オーナーのことはさっきのやりとりですっかり嫌いに近かったから、私は一オクターブ声を低くして答えた。


「褒めてるんだけどな」

「あはは、オーナー、なずなちゃんにそういう回りくどい言い方しても伝わらないですよ。褒めるならちゃんと褒めてあげないと」

「ふうん……」


オーナー、緒方さんとの話が済んだのなら早く帰ってくれないかな?

せっかく仕事でいい気分になっているのに、同じ空間に居るだけでなんだか疲れる。


私は不機嫌全開でさっきのカップルを接客したときに使ったテーブルの上を片づけていた。

するとソファがぼすんと音を立て、膝立ちをしていた私の目の前にあの高そうな革靴が現れた。

ちょっと、いくらいい靴を履いてるからって人の顔の前にどうして足を…!!


顔を上げると、偉そうに足を組んだオーナーが私を見つめて言った。




「小泉なずなさん……僕と一緒にイギリスに行かない?」




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