アロマな君に恋をして
「い、いらないですっ!」
「あら、別にそういうことに使えって言ってないわよ?組み合わせ次第で色んな効果があるんだから、二人で色々試せばいいじゃない」
……ああ、はめられた。
なんか今の、私だけいやらしいこと考えてたみたいじゃない。
でも確かにそうよね、イランイランもサンダルウッドも、別に本物の媚薬っていうわけじゃないんだから、上手く使えば……
「……それじゃ……頂きます」
私はかなり迷ってから、それを受け取った。
「よし。あ~、あの可愛い麦くんが狼になっちゃうと思ったら興奮しちゃうな」
「お、緒方さん、やっぱりそういうつもりで……!!」
「当たり前じゃない。次の日のなずなちゃんの肌の輝きを見て当ててみせるわ。精油を使ったのかどうか」
「~~~~!!」
私、この人には一生勝てない気がする……
諦めて鞄にしまった袋が歩くたびにがさがさ鳴って、いちいち頬を熱くする自分がばかみたいだった。
麦くんの前では焚かないもん……絶対焚くもんですか。
でも……
焚いたらどうなるんだろう。
もしもこれを焚いてもなんにも起きなかったら、さすがに危機よね……
そんな不安からか、緒方さんと別れて家に帰りつく頃には、私の気持ちの天秤は“焚いてみる”の方へ大きく傾いているのだった。