アロマな君に恋をして
だけど、考えに考えて結局はまた……
「……希望は、特にない」
やってしまった。可愛くない発言。顔の見えない電話で意地張ってどうするのよ……
それでもやっぱり麦くんは優しくて。
『じゃあ、お昼ちょっと前になずなさんを迎えに行って一緒にご飯食べて、それから少しぶらぶらしたらイルミネーションの綺麗なとこでも行きますか?』
「……うん」
『楽しみですね』
「……うん」
『なずなさん、うんしか言ってないし。まだ緊張してるんですか?』
「……うん。……あ」
私が声を上げると、電話越しに麦くんがクスクス笑う声が聞こえた。
いたたまれなくなってペットボトルの水に手を伸ばしたけど、一口水を飲んだくらいじゃ、喉の渇きも顔の火照りも収まってくれそうになかった。
『そういうなずなさんも可愛いですけど、明日一緒に過ごしたらもっと壁がなくなってるといいなぁ』
「……自信、ないけど」
『大丈夫、俺が頑張ります。それじゃ、また明日。おやすみなさい』
おやすみ……と返して切れた電話をベッドに放ると、水を一気飲みしてぷは、と息を吐いた。
たかが電話なのに、この心臓の疲労感……私、麦くんのせいで絶対寿命何年か縮んでると思う。
それにしても、明日は初めて二人で外出するんだ……
「家にお邪魔するのとはまた違う緊張……」
その夜の私は高鳴る胸を持て余し、麦くんにもらったアロマを焚いてもなかなか寝付けなかった。