アロマな君に恋をして


――電話が鳴ってる。さっきから何回も、うるさい。

これから麦くんとデートなんだから、今はゆっくり寝かせてよ……

布団をかぶって目をぎゅっと閉じると、着信音は鳴りやんだ。
けれど、徐々に眠気が覚めはじめてしまった。


「……今、何時?」


目をこすって携帯に手を伸ばすと、時間の表示よりも着信件数の多さに目を引かれて、私は首を傾げる。

発信者を確認すると、全部、大久保麦。

はっとして今度は時間を見ると14:21という不吉な四つの数字が。


「私…っ!寝坊して……っ」


バッと布団を剥いで着信履歴からすぐに電話を掛ける。

一コール目で電話に出た彼の声を聞く前に、私は大声で謝った。


「ごめんなさいっ!!私、たった今起きて……っ!!」

『なずなさん……あの、謝らなくていいんでお願いがあります……』

「な、な、なに……?私にできることならなんでもする!!」

『とりあえず……部屋に入れてもらっていいですか?』


言葉の最後にずる、と鼻を啜る音が聞こえた。

もしかして、迎えに来るって言ってたからずっとうちの前に……?そんなの、寒くて体調悪くなるに決まってる!


起き抜けでぐちゃぐちゃの前髪を一昔前に活躍した女子柔道選手みたいに頭の上で結び、スウェットの上に大きなストールを羽織ると慌てて玄関を開けた。


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