アロマな君に恋をして

「麦くん、大丈夫……!」

「なずなさん……」


部屋の前の壁にもたれかかって座っていた麦くんは、力ない笑顔を私に向けた。

こんな彼は初めて見た。無理してずっと待っててくれたんだ……私のばか。なんでこんな大事な日に寝坊なんかするのよ……!


玄関に出ていたクロックスをつっかけて彼の側にしゃがみ、肩を貸して立ち上がると熱い吐息に耳をくすぐられた。


「なずなさん……今日、すごいかわいいです」

「何言ってるのよこんな時に……!熱でおかしくなってるんでしょ」

「そんなことないです……その髪型とか、超休日な感じが無防備でたまらないです」

「こ、これは応急処置で……いいから早くベッドに!」


背の高い彼を寝室まで連れて行くのはかなりの重労働だったけど、なんとかベッドに寝かせることに成功した。

布団をかけてあげながら、私は尋ねる。


「……何時に来てくれてたの?」

「11時半」

「う……ごめんなさい」

「俺の方こそ。こんな時に風邪ひくなんて、カッコ悪いですよね」


麦くんは潤んだ目をして言った。


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