さくら降る季節

 まるでハゲの怒りっぽい親父が、「こんな飯食えるか!」ってちゃぶ台をひっくり返すように。

 スローモーションのようにゆっくりとその料理は宙を舞う。

 幸恵のそばに置いてあったカルピス入りのペットボトルも宙を舞う。

 亜希……は無表情だけど、他の悠夜、幸恵、いつの間にか居た美里は驚いた顔をしていた。

 健吾も驚いた顔を……ってかなんで健吾も驚いてんの?健吾のせいで竜司は怒ってるのに……ハァ。

 やっぱり後で絞めよ。

 目の前にある料理はもう全部パーだなって思った。

 けれど。


「よっと、おっと、はい……っと」


 宙を舞う料理全てを疾風の如く、尚美しく、元の器に入れるという驚異的な人物が現れた。


「ダメじゃないか、こんな華やかな場所でケンカなんてしたら」


 にこりと微笑んだその人物は、須皇昶だった。
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