さくら降る季節
「このバカ騒ぎが……楽しいんだよ。花見を通していつもと違う会話をして、ご飯を食べてバカ騒ぎをして……仲間達の違った一面を見るんだ」

「違った一面を見て、軽蔑でもするつもり?」

「違うよ。――仲間達との絆を、深めるんだ。幸恵さんと竜司が酒を飲むこと、美里さんは頑張り屋さんだってこと……はじめて、知ることが出来たから」

「……」


 僕は静かに腰をおろす。


「悠夜」

「ん?」

「幸恵の横にあるペットボトル、取って」

「――…了解」


 僕が何も言わなくても、悠夜は僕の心変わりに気が付いてるんだろうな。

 しょうがないから、もう少しだけこの花見とやらに付き合ってあげる。

 悠夜から渡されたペットボトルを開けて、僕はそのカルピスを一口飲んだ。


「うげぇっ、甘……!」

「あ……言うの忘れてたけどぉ、それカルピスじゃなくて甘酒だからぁ」


 べろべろに酔った幸恵の悪気のないその微笑みを見て、僕は目の前の料理をひっくり返した。

 まるで――横で顔を赤くしながら酒を飲む竜司のように。


END.
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