君がため、花は散りける
一喜一憂ある四時限目。暖房で暖かい教室の窓の外、白い雪が降り続けていた。
それをぼんやり眺めながら、数学教師がテストの説明や解説なんかをやっているけれど、それら全て耳から耳に流れ、ただ陰鬱な気持ちになっていた。
そして、終業のチャイムが鳴る。いち早く反応したのは隣の奴、石崎だった。
終わりの号令なんてそっちのけで、財布を握りしめ教室を出る。
きっと、食堂戦争に出征したのだろう。
…所謂、限定二十個のカレーパンを買いに行ったのだ。
最近では奴、度々勝利を勝ち取っているらしい。だからか、神話の勇将である アキレスなんて大層に煽られている。
でもアキレスって、かかとだけ不死身じゃないなんて言う変な奴だったよね?
まさしく奴に相応しいといえば相応しい。数学“以外”はてんで駄目という変な奴なのだから。
イヒヒっ、とほくそ笑む私に、石崎の席にお邪魔していた瑞樹が溜め息をついていた。
「…智子、いい加減、女らしく振る舞ったら?そんなんだから彼氏もろくに出来ないんじゃない。」
「あら、瑞樹さん。それは禁句のはずですわよ。オホホ。」
背筋を伸ばして足を揃える。瑞樹の言う通り、私なりの女の振る舞いをしてみせる。
瑞樹は溜め息をするばかりで、手に持っていたお弁当箱を広げる。
構わず、オホホっ…と至極上品に笑っていれば、そこにタイミング悪く…
「うわぁ、とうとう頭可笑しくなったのか。ご愁傷様だな。」