君がため、花は散りける

 アキレスこと変な奴。…いやいや、石崎がおそらくカレーパンが入っているだろう紙袋を持って私に可哀想な目を向けていた。

 すかさず、奴のかかとに蹴りを入れてやる。

 なんたってアキレスの弱点はかかとなのだから!

「ワーハッハッハ!アキレスよ、ここでくたばれっ!!」

「誰だよ、お前!?トロイアの王子なのか?そうなのかっ?」

 トロイア?…あぁ、トロイ戦争でアキレスの敵だった王子か。

「ワーハッハッハ!」

 間髪入れずにかかとに蹴りを。さすがのアキレスも痛がってぴょんぴょん跳ねて逃げている。

 すると、間もなく雷が落とされる。

「…二人ともっ!!落ち着きなさい!」

 瑞樹さん、必殺技。怒りの雷鳴!!

「「はい…すみません。」」

 素直に謝る事、それが私の良いところであろう。

 瑞樹は、黙々とお弁当を食べている。私も鞄から巾着に入ったお弁当を出し、食べ始める。

 石崎は友達の所々に行き、今日もまた食堂戦争に勝利した事を報告して行っていた。

 あ、今日のおかず、玉子焼き一個しか入ってない。…あーぁ、ケチられたか。

 なーんて、思ってると、

「そういえばさ、智子知ってる?」

「んー?何を。」

 やけに神妙な面持ちの瑞樹。声も潜めていて、少し緊張する。

「…最近、ここら辺で失踪者が多発してるんだって。まるで、神隠しにでもあったみたいに、その人の姿がどこ探しても見当たらないの!」
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