君がため、花は散りける
あー、恐ろしい!と言いながら、お弁当の定番、タコさんウインナーを頬張る瑞樹。
「…今時、神隠し?なにそれ、皆、非現実的な社会目指してんの?この時代まできてオカルト主義?」
数秒前の緊張を返してくれ。それは神隠しじゃなくて、ただの家出だ。今のこのご時世、逃げ出したくなるもんなんだ。
あー、私も数学から逃げ出したい。
きっと、私の人生の三分の一は数学のせいで損をしている。
「違うってば!…はぁ。智子も気をつけなさいよ。神隠しは言い過ぎにしろ、実際、人が消えてるんだから。」
へーい。と適当な相槌を返す。
…あ、グラタンの占い(冷食)。えーっと?『きょうは、おうちでゆっくり寝ましょう!運気アップ!!』…だって。
言われなくったってそうするよ。私、帰宅部だし。基本、暇人だし。
「何、何の話し?」
ズイっ、と横から現れたのは奴、石崎だ。カレーの香ばしい匂いが鼻をかすめる。
「…あぁ、最近、神隠しが増えてるんだって。あんたアキレスとかいう英雄でしょ?何とかすれば。」
そう言ってやると、奴…ではなく瑞樹からの鋭い視線を送られる。
いや、馬鹿にしてるつもりはなかったんですけどね。
「俺、カレーパンの英雄だから無理。あー、でも、似たような話し聞いた事あるぜ?うーんと、あれだ。えーっと何だっけ?」
「何よ、カレーパンマン。思い出せないなら早くどっかに行きなさい、カレーパンマン。」
少しふてくされ気味の瑞樹お嬢はカレーパンマンに八つ当たり。
「…んー。あっ!?そうだ、学校の裏の山。そう、そこの麓にある古い家屋に心霊現象がすっげー起こってるんだって。それを見た奴はみんな黄泉の国に連れてかれるんだよ!」