君がため、花は散りける
「わ、わわわぁ…。なんか、雰囲気あんね。…いや、怖い訳ないけど。」
だってお嬢、怖がりだし。
意外や、意外!?なんて、口にして言えば怒られるんだろうが、本当は乙女な所もあるのが高田瑞樹だ。
暗い夜道に懐中電灯一つの乏しい明かり。確かに雰囲気だけは一丁前だ。
家などはなく、一応舗装された坂道。後ろを振り返ると下に広がる眩しい光が見えた。
「あ…。」
前を向いて歩きだしたが、突然、舗装されたコンクリートの道ではなくなっていた。
工事途中なのか柵があったが、石崎が聞いたという噂のおかげかどうぞ入ってくれとでも言うように開いていた。
「なんか、幽霊が邪魔して工事できませんでしたってオチがついて…」
「や、やめてよ!滅多なこと言わないで。」
じゃあ、何でここに来た?そういうのを求めていたのではないのかい?
「はいはい。お嬢、足下気い付けてねぇ。」
「う、うんっ。」
うーん、このまま何もないままって、面白くないなぁ。…そうだっ!
「―……うあぁっ!?」
「きゃぁぁっ!」
まんまと引っかかったお嬢は腰を抜かして座り込む。
「アッハハハハ!」
大声で笑ってあげれば、すっごく不機嫌に。当たり前か。
暗くとも二人の白い息は確認できた。
「もうっ!やめてよ、そんな冗談!!次したら絶交だから。」
久々に聞いたな、絶交って。小学校の頃はいつもそんな事を言い合って仲良く登下校を共にしたなぁ。
「ごめん、ごめん。分かったよ、もうしないから。」