四季。彼女を亡くした冬
あれは付き合い始めの春だったかな。
怒り狂う彼女に終いには俺もブチ切れたんだ。
種がどうとか知らねぇよ。
黙って食えよ。
この件以降、俺が干し梅を買ったと言えば逐一種ありかなしか聞いてくるようになった。
そんな春の思い出…。
…いや、トラウマだな。
「あー。もう冬なんだねー。冬は嫌いだよー寒いんだもん」
真っ赤なマフラーに埋めた口元は真っ赤になった鼻を強調させていて普通に笑えた。
「おい。鼻が赤ぇぞトナカイ女」
「…失礼のかたまりだね君は。気にしてるのしってるくせにさー」
スッとした高い鼻が先っぽだけ赤く色づくその光景は、嫌でも笑いとつまみたい衝動を誘う。
「つままないでね、絶対」
釘を刺された。
「しねぇよそんなこと。うるせぇやつが余計うるさくなる」
「とか言ってやる気満々だったでしょ。平良って意外とわかりやすいよね」