空々蝉
 


乾いた畳に、スカートから剥き出しになった膝が擦れる。
わたしの胸に顔を埋め、抱き寄せてくるその痩せた男は、

綺麗なものを綺麗と言わず
醜いものを醜いと認め

その上で、ただ包み隠さず、ただ美しく描くだけ。




『全部壊して、全部捨てて、魂ごとからっぽになったら、きみのことを愛してあげる』


そこに愛なんてなくても。
待つものが幸せではなくても。

コドモのわたしが見たものは、残酷で、空虚で、そしてきっと何よりも満たされた、


現人(うつせみ)の世を生きるわたしたちの

ひとつの歪んだ、恋のカタチ。








『空々蝉』

-END-


 
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