空々蝉のレビュー一覧
いや、そうでは無いなと思います。ある種の本音かも知れないです。 個人的にも好きな短編ですし、歪んでいながら不快にならないのは作者の上手さかも知れないです。 読んで下さい。
陽炎の中の景色のような。 なんだかこことは異なる空気の流れる場所で、紡がれているかに感じるお話。 叙情的に語られる文章に、じわっと沁み込むようにこの世界へ入っていきます。 近代文学の本を読んだときと、同じような気分。どこかノスタルジックで非現実的で、かつとても近くにあるような世界。 儚いなあと思いました。なんとなく、勝手に、彼らの繋がりは長く続くものではないような気がして。 儚いからこそ美しくて、きっと彼らはその美しさを、捨てられないような気がして。 語るにはとても難しい作品です。だからこそぜひ読んで頂きたいです。 短いお話ですが、時間のないときにではなく、ゆっくりと落ち着いた夜に、ぜひ。 あと、わたしは最初は「うつうつ」と読んでいましたが、読み終えた今は「からから」でもいいなあと思っています。
子どものわたしは、原稿用紙が散らばる、畳の部屋に踏み込む。 彼が描くものを、一番に見るために。彼がつむぐ言葉を聞き、彼に触れられ、彼自身に、会うために。 感情に巻かれる自分は、彼の目にどう映っているのか。 八ページ。この短さでこんなにも惹き込む空気が作れる。 八ページ。もっとこの世界に浸っていたい。 そんな風に思わせてくれるお話でした。 散らばるフレーズが、一つ一つすくい上げて吟味したいほど素敵。決してこの世を優しくは見ていない、星を屑と呼ぶ彼の魅力が、存分にわかります。 美しいもの。見にくいもの。現世には、どちらが多くはびこっているのでしょうか。誤魔化さず、ありのままに物事を見るのは難しく、空っぽにしてしまわなきゃ、してしまいたい、そんな想いに駆られて。 素敵なお話を、ありがとうございます。
その鳴き声が なんとなく、好き。 だけど、あなたは 五月蝿いノイズだと言う。 ―― 平屋の和室での情事 幸せの定義なんか分からない だけど、こんなに惹かれるのは …なぜ? *――*――*――* 短編なので多くは語れませんが、 この、しっとりとした余韻、好きです。 ぜひ、ご一読を!