Taste of Love【完】
「なんかこうやってるの懐かしいな。あれ確か高一の夏だっただろ。お前がさ階段から落ちて足ひねって」
「あ……うん」
「保健室におぶっていったら誰もいなくて、とりあえずこんな風に水で冷やしてさ」
思い出を懐かしんで、楽しそうに話す翔太と風香の間にはかなりの温度差があった。
水道を止めて、タオルで手を優しく拭いてくれている翔太を思わず見つめてしまう。
「これで大丈夫だろ?あんまり痛いなら医務室行くか?」
「ううん。翔太――三栖室長のおかげで平気みたいです」
呼び方を変えた風香に翔太は一瞬眉を寄せたが「ならよかった」と一言言ってほほ笑んだ。
「用事でしたか?」
「なんでそんなに他人行儀?」
不満そうな顔を翔太がする。
「他人行儀というか、上司に対する敬語です」
「あっそ。ちょっと懐かしくて話かけただけだから。企画書明後日までだぞ。お手並み拝見だな」
そう言って調理室を翔太は出て行った。
(やけどの傷跡心配してくれるなら、あの時の私の心の傷の心配してほしかった)
身勝手だとは思うがそれほど風香には翔太との“痛い思い出”があるのだ。
「あ……うん」
「保健室におぶっていったら誰もいなくて、とりあえずこんな風に水で冷やしてさ」
思い出を懐かしんで、楽しそうに話す翔太と風香の間にはかなりの温度差があった。
水道を止めて、タオルで手を優しく拭いてくれている翔太を思わず見つめてしまう。
「これで大丈夫だろ?あんまり痛いなら医務室行くか?」
「ううん。翔太――三栖室長のおかげで平気みたいです」
呼び方を変えた風香に翔太は一瞬眉を寄せたが「ならよかった」と一言言ってほほ笑んだ。
「用事でしたか?」
「なんでそんなに他人行儀?」
不満そうな顔を翔太がする。
「他人行儀というか、上司に対する敬語です」
「あっそ。ちょっと懐かしくて話かけただけだから。企画書明後日までだぞ。お手並み拝見だな」
そう言って調理室を翔太は出て行った。
(やけどの傷跡心配してくれるなら、あの時の私の心の傷の心配してほしかった)
身勝手だとは思うがそれほど風香には翔太との“痛い思い出”があるのだ。