Taste of Love【完】
「サニーエイトも契約を解除するなら今だぞ。早く逃げるんだな」

そのなげやりな言葉に風香の感情がこぼれ出した。

「浅見さんこそ、何を偉そうに言ってるんですか?」

「ハァ? どういう意味だよ」

 ふたりの言葉が喧嘩腰になる。

「だいたい何を知った風に言ってるんですか? 今まで浅見さんのスイーツを食べたお客様が言った“美味しい”を否定する権利はたとえ浅見さん本人にもありません」

 風香の言葉に大悟は呆気にとられる。

 しばらくの間、ふたりを沈黙が包んだ。

 沈黙を破ったのは、大悟の笑い声だった。

「あははは……はは、やっぱぶー子はスゲーな」

 大悟の手が風香の頭に伸びてきて、くしゃくしゃと掻きまわした。

「な、何するんですか! 人が真剣にっ……」

 その時急に立ち上がった、大悟の体か傾く。

 咄嗟に風香が支えたが、小さな風香が 百九十センチを超える大悟を支えられるはずがなかった。

「うぅ……気持ち悪い」

 大悟の真っ青な顔をみて、あわててトイレの場所を尋ねる。

「吐くなんて勿体ない。あの酒高いんだ」

(だったらどうして、こんなヤケ酒に煽るのよっ!)

 グラグラと今にも倒れそうな大悟を支えるのに精いっぱいだ。

「わりぃ。ポケットに車のキーが入ってるから連れて帰って」

「え? 私がですか?」

「お前以外誰がいるんだよ。家の鍵もそれと一緒になってるから、ウエっ……」

大悟は青ざめだ顔で、口元をおさえていた。

「あぁああ! すぐに送っていきますから、お家までは我慢してください」

 慌てて店の外の駐車場へ車を取りに行ったのだった。
 
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