Taste of Love【完】
◆届かぬ恋心
「はぁ……」

着替えだけ済ませた風香はすぐに、会社へと向かった。

部屋に戻り、スマホを確認すると翔太からの着信がいくつもあった。

結局昨日何も報告することができなかった風香は、早めに会社に向かい内容を整理しようとしていた。

 通勤の間中、昨日の大悟との出来事が頭の中を占める。

 別れる間際の、大悟の態度を思い出すと風香の胸がキシキシと痛んだ。

 (自分がそうしたいと思っただけ。浅見さんに同じ気持ちを求めるのはルール違反だ)

 ただの成り行きだ。

 だからそこに、何かを期待するのは間違っていると風香も理解していた。

 後悔しているわけではない。風香自らがそう望んだのだから。

 けれど拭いきれない胸の痛みがあるのも事実だった。

会社に到着して、デスクへ向かうとすでに翔太が出勤していた。 

「結城、昨日連絡がつかなくて心配したんだぞ」

 挨拶もせずに、話を始めたことから、かなり心配をかけていたことを理解した。

「すみません。疲れてしまって電話に気が付かなかったみたいです」

 翔太のデスクの前にたち、頭を下げる。

「で、浅見さんの話は聞けたのか?」

「はい、そのことですが……」

 昨日の大悟との話を要約して翔太に伝えた。

「そうか……。我々は浅見さんを信じる。お前の結論はそう言うことだな?」

「……はい」

 静かに、でも力強く頷いた。
 
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