Taste of Love【完】
(来ちゃった……)
風香は今、パティスリーアサミの前に立っていた。
結局あのあとも、仕事が思うように手に着かずに、頭の中は大悟でいっぱいだった。
そしていてもたってもいられずに、終業後ここに来ていた。
いつもなら、この時間でも最後の駆け込みのお客さんが何人もいるのに。今日はひっそりとしていた。
(雑誌の影響がこんなに顕著に現れるなんて)
あの夜の、どこか諦めたような大悟の表情や今日の無理矢理作った笑顔が頭によぎり胸が痛む。
風香は店の扉をゆっくりと開けて、店内にはいった。
レジに立っていたミカが、ガバッと顔を上げ「いらっしゃいませ……」と言った後、風香の顔を見て残念そうな顔を浮かべた。
「アンタなの? 何しに来たの?」
「浅見さん、どうしてますか?」
ミカに近づくと、ショーケースの中にたくさんのケーキが残っていた。
それをみてますます胸が痛くなる。
「大悟なら人と会う約束があるからって、先にあがったわよ」
「そうですか……」
「まぁ、店がこの状態だからね。私ひとりで十分よ」
そう言ったミカの顔は前回会った時の気の強さを感じさせる表情とはうってかわって、疲れていることがひと目
でわかった。
風香は今、パティスリーアサミの前に立っていた。
結局あのあとも、仕事が思うように手に着かずに、頭の中は大悟でいっぱいだった。
そしていてもたってもいられずに、終業後ここに来ていた。
いつもなら、この時間でも最後の駆け込みのお客さんが何人もいるのに。今日はひっそりとしていた。
(雑誌の影響がこんなに顕著に現れるなんて)
あの夜の、どこか諦めたような大悟の表情や今日の無理矢理作った笑顔が頭によぎり胸が痛む。
風香は店の扉をゆっくりと開けて、店内にはいった。
レジに立っていたミカが、ガバッと顔を上げ「いらっしゃいませ……」と言った後、風香の顔を見て残念そうな顔を浮かべた。
「アンタなの? 何しに来たの?」
「浅見さん、どうしてますか?」
ミカに近づくと、ショーケースの中にたくさんのケーキが残っていた。
それをみてますます胸が痛くなる。
「大悟なら人と会う約束があるからって、先にあがったわよ」
「そうですか……」
「まぁ、店がこの状態だからね。私ひとりで十分よ」
そう言ったミカの顔は前回会った時の気の強さを感じさせる表情とはうってかわって、疲れていることがひと目
でわかった。