Taste of Love【完】
「一日こんな感じですか?」

「まぁね。この店がオープンしてこんなことはじめてよ。そうだ。ちょっと付き合ってよ」

ショーケースの中のケーキを取り出し始めた。

「あんたは何にする? 飲み物は紅茶でいい?」

「あの、私は結構です」

(食べられないなんて言えない)

「そう。付き合い悪いわね」

「あ。でも紅茶はいただきます」

 風香がそう言うと「図々しいわね」と言いながらもミカは紅茶をふたり分準備して店内のテーブルの上に置いた。

 最初に口をひらいたのは、風香だった。

「あの、浅見さんの様子はどうですか?」

 質問に一口紅茶を飲んだミカが返す。

「まぁ、表面上はいつも通りだけど。あんな大悟をみるのはお姉さんが亡くなった時以来かな」

「あの、癌だったって……」

「あんた、そんなことまで聞いてるの?」

ミカの驚いたような顔をみて、風香も驚いた。

「あの、はい。ご本人から直接聞きました」

「あ、そう……。でも思い出す季節かもね」

ミカはテーブルに肘をついて、遠くを見つめている。
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