Taste of Love【完】
それから一週間、風香のスマホが着信を知らせる。

(浅見さん……)

次の日から、風香はなんどか大悟に連絡をとろうと試みていたが、電話をしても留守電でメールの返事もなかった。

そんな相手からの電話に少し動揺したけれど、気持ちを落ち着けて電話に出た。

(今は仕事中。落ち着いて)

 胸の中で自分に言い聞かせてから、通話ボタンを押した。

「はい。結城です」

『俺。浅見です』

「お世話になっております。どうしましたか?」

 風香は突然の大悟からの電話に動揺していて、先を急かすような言い方をしていた。

『あの雑誌の記事の件だけど。明日にはカタが付くから』

「え? 一体どういうことですか?」

『とにかく、迷惑かけてすまなかった。三栖サンには俺からきちんと説明するから』

「あの、くわしく……」

『悪い。いま時間ないから』

――プツン

 風香と大悟をつないでいた電話が切れた。

(避けられてるよね……)

夜を共にしたあの日から、間違いなく避けられている。

大悟が口にした“同情”という言葉が風香には引っかかっていた。

 風香のあの日の行動は決して同情などではない。だが大悟はそう思っているのだ。

 男としてのプライドもあるだろう。風香を避けているのもなんとなく理解できた。

 (ちゃんと自分の気持ちを伝えないと。同情なんかじゃないって)

 さっきの電話の内容も気になる。

 その日の仕事が終わったあと、風香はもう一度大悟の元を訪ねることにした。

目の前のパソコンの画面には大悟とともに作り上げた商品の画像があった。

(ぼーっとしてないでしっかり仕事しないと。彼と作り上げた商品。ちゃんとお客様のもとにちゃんと届けたい)

 風香は気合を入れなおして、仕事に取り掛かったのだった。
< 149 / 167 >

この作品をシェア

pagetop