Taste of Love【完】
「なんで、お前が泣きそうになってるんだよ」

「だって、浅見さんのスイーツがあんな記事で、穢されたままなんて私、私耐えらなかったから」

 大悟の手が風香に伸びてきた。そして触れそうになった瞬間その手がとまった。

(……どうしたんだろう?)

「だからこのことは明日で解決だ。だからお前の企画への影響もないと思う。迷惑かけたな」

「迷惑って、浅見さんのせいじゃないですよね」

「それでもだ。心配をかけたことにかわりないだろう」

 そう言ったかと思うと、目の前にあったノートを一枚破った。

 そしてそれを風香に差し出した。

「これ……」

 受け取って内容をみると、それはチョコレートのレシピだった。

「お前にやる。これでバレンタインのリベンジ三栖サンにしろよ」

 驚いて顔をあげる。

「三栖サン、ニューヨークに行くんだろ?その前にちゃんと気持ちを伝えろよ」

「どうしてその話を?」

風香の質問に、大悟は立ち上がりマグカップを片付けながら答えた。

「さっき、事の顛末を説明するために連絡したときに聞いた。出発はちょうどバレンタインだって? ロマンチッ
クでいいんじゃねーの?」

(私が好きなのは、浅見さんなのに)

目の前の好きな人に、他の人への告白を応援されている。その事実が何を意味しているか風香にも理解できた。

(私もしかして、告白する前に失恋決定した?)

 それでもなお、何か別に理由があるんじゃないかと思わずにいられない風香は、大悟に尋ねた。
< 153 / 167 >

この作品をシェア

pagetop