Taste of Love【完】
これは大悟がくれた最後の言葉だと思い、何度も何度も読み返す。

「えっ? これって……」

(もしこれが私の思い違いじゃなかったら)

風香は急いでエプロンをつけてレシピ通りチョコレートを作りはじめた。

(ちゃんとこのチョコレートで自分の気持ち伝えないと)

チョコレートを刻みながら風香は心を決めたのだった。

***

午前半休をとって、翔太を見送った風香はそのまま会社に戻った。

その前に駅前のサニーエイトの店舗に寄った。

バレンタインの特設の棚は今日までだ。棚の前にお母さんに連れられた小さな女の子がチョコレートを選んでいた。

手にもっていたのは、風香が大悟とともに考えたチョコレートだった。

「ママ、パパこれ好き?」

「うん。きっととっても喜んでくれるよ」

「うん、あたし好きっていうの。パパに」

ニコニコと笑顔で小さなチョコレートをレジに持っていく姿をみて、風香は顔を綻ばせた。

そして小さな笑顔と幸せを作りだすスイーツの開発に関われることを誇りに思った。

会社に戻り、仕事にとりかかる。

< 158 / 167 >

この作品をシェア

pagetop