Taste of Love【完】
仕事を終えた二十二時半、風香は大悟の店を訪れていた。二十一時に営業を終えた店内には人気がなかった。

上を見ると事務所の灯りがついていた。風香は外階段を上がって扉をノックする。

「はい」

低くてよく通る声は、風香が二度と聞けないと思っていた大悟の声だった。

「こんばんは」

扉をあけて中に入ると、ソファから首だけでこちらを見た大悟が驚いて立ち上がった。

「ぶー子、お前何しにきたんだよ」

「何って……」

どうやって話をすればいいのか、風香は迷う。

そんな風香の様子をみて、大悟が先に口を開いた。

「三栖サンにチョコ渡さなかったのか?」

ソファに座りなおして、風香の顔を見ずにたずねた。

「渡しました。今度はちゃんと受け取ってもらえました」

「……そうか、で、ここにはその報告に来たわけ?」

「はい。それだけじゃないですけど」

そう言いながら、風香はソファの方に歩き、大悟の前に立った。
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