Taste of Love【完】
そして紙袋から包み紙を取り出す。

「これ、渡そうと思って、バレンタインチョコ」

「は?三栖サンにはちゃんと受け取ってもらえたんだろ」

怪訝そうな顔で風香をしたから見上げる大悟。

「はい。ちゃんと渡しました。義理チョコ」

「……義理?」

大悟の目が風香の瞳を捉えた。

風香はまっすぐに大悟の目を見つめかえす。

「はい。初恋をちゃんと終わらせてきました。私の本命チョコはこれだから」

ラッピングしたチョコを大悟に手渡す。

「浅見さん……好きです」

これほどまでに真摯に自分の気持ちを相手に告げたのは初めてかもしれない。

高校生のときに何も言わず、何も確かめずに辛い思いをしてずっと引きずっていた。

そんな思いをするくらいなら、大悟にはきちんと自分の気持ちを伝えたかった。

大悟は風香を見つめたまま、微動だにしない。

(何か言ってよ、ダメならダメってはっきり言って)

奥歯をぐっと噛みしめて、覚悟した。

しかし、大悟は何を語るでもなくラッピングを解き始めた。
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