Taste of Love【完】
化粧ポーチからグロスを取り出して唇にのせる。

鏡の中の自分は確かに疲れた顔をしている。

(これでちょっとはましになったかな?)

無理矢理笑顔をつくり自分を納得させて会議室に向かった。

戻った会議室にはすでに企画室のメンバーがあつまり始めていた。

風香も席について気合いを入れた。

すると扉がひらき、翔太、大悟と共に企画部長、製造部長と企画畑出身の常務までもが現れて、一気に身がひきしまる。

「この会議に常務も急遽参加していただくことになった。でははじめよう」

翔太の声で会議がはじまった。

風香はゆっくりと席を立ち、会議室を見渡し深呼吸した。

「――では説明させていただきます」

会議参加の面々は目の前に置かれた試作品を口にしながら風香の話を聞いていた。

その表情を気にしつつ、コンセプトや特色いままでの商品との比較、購買層などを説明していく。

説明が終わり、試食の感想や質疑応答に移る。

(ここからが正念場)

今までは準備してきたことを話すだけで済む。だがここからは実際のやり取りのなかでどうやって上の人を納得させるかがカギになる。

「わざわざこうやってフォークなりスプーンなり使って食べるのって面倒じゃないか?」

企画部長が尋ねてくる。
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