Taste of Love【完】
◆おいしい食卓
(会心の出来っ!)
風香はシュークリームを大事に抱えて、足取りも軽く地下鉄の改札をくぐった。
先日の会議で大悟にダメ出しされたシュークリームを、再度作り直したものが入っている。
自分でも手ごたえがある。こういう時の仕事は、疲れているはずなのにまったくそれを感じない。
早く大悟にOKを出してほしくて、連絡を入れると店に来てほしいとのことだった。
時間は十八時をまわったところ。今から準備して向かえば十九時前までにはパティスリーアサミに到着できる。
行先のボードに“パティスリーアサミ”と書き戻り時間に“直帰”と書き、企画室のメンバーに挨拶をして会社を出てきた。
日が長くなったとはいえ、十九時前だとさすがに暗くなってきていた。
しかし日中の熱気が残っていて、電車を降りるとジワリと汗ばむのがわかる。
「えーっと、こっちだったはず」
翔太とふたりで以前歩いた道を思い出しながら、風香は大悟の待つ店を目指した。
到着して木製のドアを開け店のほうへ顔をだした。
最初に翔太と訪れた時もそうしていたからだ。
店内に一歩足を踏み入れると、ショーケースはすでにガラガラで、予約のホールケーキだけが、迎えに来てくれるのを待っている状態だった。
以前と同じようにレジにたつ女性に声をかける。