Taste of Love【完】
「お前さぁ、なに意識しちゃってるの?」

からかうような言い方に、反論する。

「別に、意識なんてしてないしっ!」

声色から、動揺が伝わるが強がらずにはいられない。

「そう? それじゃあこういうことしても平気だよな?」

ギシリと床が鳴ると同時に、風香の体に大悟の腕が背後から回された。

風香の背中は大悟の裸の胸と密着する。

「な、何してるんですか? いい加減にしないとお玉で叩きますよ!」

そうは言っても、大悟に拘束されている風香がお玉をふりあげることなどできない。

からかわれているのはわかっているのに、風香の心臓はドキンドキンと音を大きくする。

「叩けるもんなら、叩いてみろよ」

意図して耳元でいつもより低い声を出す大悟に、風香の耳はこれ以上ないほど熱くなる。

(こいつ!できないってわかってて、わざと言ってる!)

恥ずかしさでどうにかなりそうな風香を助けたのは、炊飯器の『ピーピー』という炊き上がりの音だった。

「あ、飯できたみたいだな」

それまでどうやっても振りほどけそうになかった腕の拘束をはずすと、ダイニングに座った。
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