Taste of Love【完】
「うわ~サックサクですね!」

切り分けたキッシュにフォークを差し入れて風香は興奮気味だ。

パイ生地が土台のキッシュはホウレンソウやベーコン、ジャガイモが入っていた。

一口食べてみる。

「おいしーい!すごいです。今まで食べたキッシュの中で一番かも!」

サクサクのパイ生地、優しいチーズの味。空腹のおなかに次々とおさまっていく。

「大げさ。そんなにうまいか?でも悔しいなぁ」

「ん?何が悔しいんですか?」

口の中のキッシュを飲み込み尋ねた。

「お前そんなうまそうに食うんだな」

「そうですか?普通だと思うんですけど、で何が悔しいんですか?」

しゃべり終わるとすぐに次の一口を口へはこぶ。

「お前のそのうまそうな顔をさせたのが、俺のケーキじゃないってこと」

テーブルに肘をつき、そこに顎をのせて面白くなさそうな顔をしている。

「そこ拘るところですか?浅見さんの作ったものにかわりないと思うんですけど……」

フォークを加えたまま尋ねると「はぁ」と小さなため息をつかれた。

「俺にとってケーキは何よりも自慢できるものなの、だからこそそれで『おいしい』って言われないと俺としては
負け試合」

面白くなさそうな顔をしている。

「試合って、いったい何の勝負なんですか?それに私以外の人にはおいしいって言われてるんだからいいじゃないですか?」

どうしてそこにこだわるのだろう?風香が不思議に思っていると、セルフレームの奥の瞳が風香を見つめた。
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