Taste of Love【完】
当時のことを思い出すと胸が痛む。
「ごめん、嫌なこと聞いて。お前の“スイーツ嫌い”治るといいな」
ふとやわらかい笑顔を向けられた。
「はい。私こう見えても諦めてませんから、きっといつか治ると思います。傷はもう癒えたはずなんで」
胸をトントンとこぶしで叩いて「ほら平気だ」というようにして見せる。
「それに今回無理矢理この企画に参加したことによって、甘いものの味は判断できることに気がついたんです。それだけでも一歩進んだと思いませんか?」
普段ふざけてばかりの大悟の真剣な空気に耐えられずに、わざとかと思うほど明るくふるまう。
大悟もそれに気が付いたようだ。
「どんだけ前向きなんだよ」
おかしそうそう言って肩をゆらし笑いながら、大悟は続けた。
「そうだ、あのシュークリームの開発に俺かなり貢献したと思うんだけど、何のお礼もないわけ?俺のキッシュも食べたのに」
「だって、キッシュはお祝いって言うから、食べないと失礼じゃないですか!」
「祝ってもらっておいてその態度はなんだよ?それにひどい顔だし」
(むー!さっきまで真面目な顔で優しいこと言ってたのに急にいつもに戻った!)
「ひ、ひどい顔って、しょうがないでしょ。もともと大した顔でないし、その上残業続きで……」
「でも、今までで一番いい顔してる」
「はぁ?」
(さっきひどい顔って言ったのどこの、どいつですかー!?)
思いっきり眉間に皺が寄っているのがわかる。大事な仕事相手にする顔じゃない。
「でも、嫌いじゃない――」
「え?」
いきなり腕を引っ張られる、すると目の前にセルフレームの奥の閉じた瞳がドアップになる。
(え?はぁ?)