Taste of Love【完】
「ただいまぁ……はぁやっとついた」

(楽しかった飲み会だったのに、駅での事件で台無しだ)

マンションにたどり着いて、風香はそのままソファにダイブした。

ソファに置いてあった雑誌がバサリと床に落ちた。

「あーあ、そろそろ掃除しないと」

ひとり呟くとバッグの中のスマホが震えはじめた。

取り出してディスプレイを確認すると、翔太からだった。

「……もしもし?」

『風香? ちゃんと家に着いた?』

「はい。さっき帰ったばかりですけど。何かありましたか?」

(何か仕事でミスった? やっと土日が休みだと思ってたのに)

寝転がっていた体制を整えて、翔太の話を聞く。

「いや、結構飲んでたから大丈夫かなと思って」

「……え?」

「だから、よっばらってどこかで寝たり、へんな男に引っかかってたりしてないかなって?」

(まさかそれだけのために電話してきたの?)

仕事かも? と思い緊張していたのがとけて、次はなんだか胸がくすぐったくなる。

「心配しないでも私も大人です。ちゃんとひとりで帰れますよ」

どこまでも面倒見がいい翔太に思わず笑ってしまう。

「あぁそうだよな。なんか俺の中でまだお前が高校生でさ。酒なんか飲んでる姿見るとなんか『大丈夫か?』って
思っちゃうんだよな」

「何言ってるの? 翔太と同じ年なんだからもう結構いい年だよ。でも心配してくれてありがとう」

(翔太が相手だと素直に色々話せるな。やっぱりお互いの昔を知ってるからかな?)
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