Taste of Love【完】

「せーの」という声に一斉に風船が秋晴れの空へ吸い込まれるように上っていく。

「あれ? あれ?」

なのに風香の手元にはまだバルーンが残っていた。

「あれ? どうして?」

風香はあせって状況が把握できなかった。

「何やってんだよ、ほら見せてみろ」

どうやら腕時計に風船の紐が絡まってしまっていたようだ。

翔太はそれを外してくれている。

新郎新婦をはじめみんなが、くすくすと笑いふたりに注目していた。

「とれた。ほら一緒に飛ばすぞ」

そういうと、ふたりの風船が最後にふたつ並んで空へと飛んでいった。
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