Taste of Love【完】
「本当にそれだけなの? あやしー」
酔っている真奈美は風香を肘でつついた。
「もう、やめてってば、私ちょっと早いけどこれで帰ろうと思って挨拶に来たの」
「そうなの、色々話たかったけど、新婚旅行から戻ったら時間作って。それとコレ」
そう言って渡されたのは小さな淡いオレンジ色のブーケだった。
「あげるわ。これで次に結婚するのは風香ね」
「ほら、相手もそこにいるわよ」
真奈美が指さした方向をみるとそこには、こちらに駆け寄ってくる翔太の姿があった。
「風香、もう帰るのか?」
新郎に軽く手を上げて挨拶をしながら風香に話かけてきた。
「うん。誰かさんのせいで明日も激務だし」
「俺のせいかよ〜まあ否定はしないけど。じゃあ、俺も帰るわ。荷物取ってくるから待ってて」
「え、翔太はまだいなよ。私ひとりで帰れるよ」
「俺もそろそろ抜けたかったから。正直飲みすぎてしんどい」
一瞬顔をしかめた翔太は風香が止めるのも聞かずに、荷物を取りにいってしまった。
「ひゅーひゅー」
「どうして私が新新婦に冷やかされないといけないの? ふつう逆じゃない?」
真奈美に文句を言う。
「まぁいいじゃない。風香と三栖君の結婚式には夫婦で参加するからよろしく〜」
「もう、本当にそういうんじゃないから」
「いいから、いいから、ほら王子様がお迎えよ」
荷物を持った翔太が現れた。
「ほら、行くぞ風香」
そう言うと風香の分の引き出物もヒョイっと持ち上げてしまった。
「いいって、自分で持てるから」
「何言ってんだよ。ほらさっさと立って」
「じゃあ先輩たちお幸せに」
真奈美たちに告げてさっさと歩きだしてしまう。
「ちょ……待って。真奈美また電話するね」
前を歩く翔太を追いかけるように急ぎ足で歩く風香に「お幸せに〜」という声が今日の主役のふたりから贈られた。

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