Taste of Love【完】
「涼しくて、気持ちいいな」
風香の横に並んで歩く、翔太が空を見上げる。
九月も半ばを過ぎたが、日中はまだ残暑厳しい。しかし今の時間はアルコールの入った身体にはちょうど良い気温だった。
「真奈美キレイだったね」
「あぁ、幸せそうだった」
前を見たまま……でも翔太も思い出しているのだろう。口角が上がって
(本当はあの時のことが聞きたい……)
風香は、由利から聞いた高校二年生の時の真実を翔太に確かめたかった。
どう切り出そうか、そればかりを考えていたその時、翔太が先に口を開く。
「なぁ、どうしてあの時、何も言わずにいなくなったんだ?」
「……え?」
自分の頭の中を覗かれたのかと思う質問に、風香は驚く。
「高二の冬、バレンタインの時。どうして俺の話聞いてくれなかったんだ」
「あの、それは……」
「俺、そんなにお前に嫌われてたのか?」
「ち、違うの」
「連絡先も教えたくないほどだった?」