Taste of Love【完】
足を止めた翔太が、風香をまっすぐなまなざしで見つめる。

「なぁ、教えてくれよ」

その瞳の色に悲しみが見て取れて、風香の胸がギュッと締め付けれる。

「違うの。あのバレンタインの日、翔太が『義理チョコなんていらない』って」

今思い出しても胸が苦しくなる。

(あの時のことを思い出すだけでこんな気持ちになるなんて)

「義理チョコも受け取ってもらえないなんて……翔太にそんな風に思われていたなんてショックで」

「ちょっと待てよっ!」

風香の言葉を遮るように翔太が声を上げる。

「ショックだったのは俺の方だ。いきなり義理とか言われて俺が喜ぶと思うのか?」

「それって……」

「俺お前からチョコもらうの楽しみにしてたんだ。——お前の気持ちがこもったチョコを」

「気持ちのこもった?」

「あの時俺の気持ちわからなかった? ずっと風香だけ見てたのに、お前だって俺の気持ち分かってくれてると思ってた」

「だって、翔太何も言ってくれなかったし」

「態度でわかれよ。って言っても仕方ないか。あの時ふたりともまだガキだったもんな」

 翔太はきちんとセットされた髪をガシガシとかきむしる。

「俺、お前が急にいなくなって連絡もとれないし」

「それは、由利が……」

(違う、嫌なことから逃げるために携帯の番号を変えたのは私だ)
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