Taste of Love【完】
「ごめん、翔太が私に連絡とろうとしてくれてたの、今日知って」
由利から聞いた話をする。
「……そうだったのか。なんか俺たちタイミングが悪いっていうか」
バツの悪そうな顔をする翔太。
「あのとき私がきちんと話を聞いていればよかったんだね。ごめん」
(翔太だって傷ついてたんだ。私、自分だけが被害者ぶってた)
「今らさだよな。でもこれでスッキリした」
そう言うと、翔太は風香の手を急に握った。
「翔太? い、いきなりどうしたの?」
突然のことに驚く風香にこう告げた。
「あの日から、やり直さないか。俺たち」
「やり直す?」
「あぁ、あのとき間違ってたんだったら、あの時からやり直そう」
「それってどういう意味なの?」
「俺と付き合おう」
握られた手に力がこもる。
「すぐに答え出せないかもしれない。なんせあれから時間がたちすぎてるから」
「うん……」
「でも、いくら時間がたっても、お前への気持ちが色褪せなかったんだ」
「翔太」
まっすぐ見つめてくる翔太を、風香も見つめ返す。
「いや、正しくは再会してあのころの気持ちが蘇ってきたというか……あぁ、俺なに言ってるんだ……」
天を仰ぐようなしぐさをした後、すぐに風香を見つめなおす。
「俺とのこと、真剣に考えてくれないか。俺、お前が好きだ」
ストレートなその言葉に、心臓がギュッとなったあと、トクトクと音を立てる。
「返事は今じゃなくていい。俺の気持ちちゃんと分かっていて欲しいんだ。もう、後悔したくないから」
「うん。わかった」
「そうか」
ふたりの間に、気まずいような、くすぐったいような空気が流れる。
「行こうか?」
翔太にそう促されて歩き出す。
繋がれた手は離されることなく、ギュッと握られたままだった。