きっと上手くいく
「だからお腹の子供は私の子供なの。結婚なんていらない『してやってもいい?』って何?私が頭を下げて『お願いします』とか『責任とって』とか言うと思ったの?」
怖い
今日は怖いぞオイ。
自分ひとりの身体じゃないからか?
子供がいるってスゲー。
圧倒されながら尻込みしてると
「さっきから言ってるけど、和也の子とは限らないでしょ。バカな上から目線で言わないで」
うんざり顔で言われてしまった。
「早く行かないと、本当に遅刻するよ」
「それより大事な話があるだろーが」
「私の中では結論出てるもん」
「俺の中では出てない。お前があのデブと一発ヤッてたなんて冗談じゃない!」
「そうだよ。冗談じゃないもん」
一発とは限らないと思うと背筋がゾッとする。
「俺よりあのデブの方がいいのかよ」
「……今の……和也よりいいかもね」
その一言で底のないブラックホールに吸い込まれた気分になった。
「でも健ちゃんとも一緒になる気はない。どっちの子かわからないから迷惑かけたくないから」
吸い込まれて宇宙の塵になりたい。
会話が平行線だ
頭冷やそう。
「……行くわ」
彼女の前を通り過ぎ
3分で営業スーツに着替えて家を出る。
「いってらっしゃい」
いつものように玄関先に出る彼女の表情は見えない。
何を考えてるんだ千尋。
「身体冷やすなよ」
一言だけ言い残し
俺は重たい足を引きずり職場に向かう。