きっと上手くいく


どうしよう

ペタリと床に座り天井を仰ぐ

どうしよう……。

しばらく呆然としていると
LINEの音が鳴る

【免許更新終了。今から帰るけど何か買ってく?】

のん気だなぁ
木曜日の彼女が来てったよ
ゴムに穴開けてたんだって
それ使っちゃったよ。

画面の文字が涙で歪む

【友達の家に泊まる】
彼にそう返事をして
私はスマホだけを持ち
サンダル姿で外に出る。

雨上がりの夕暮れ
じっとりとした空気が肌にまとわりつく

どこに行こう
どうしよう

でも
デキたとは限らない。
大丈夫かもしれない。

不安で不安でたまらない。

行くあてもなく歩いていると

「千尋ちゃん」
おずおずと声がかかり
振り返ると健ちゃんが直立不動でそこにいた。

「今日はお休みだったんだね。僕、忘れていて……その……千尋ちゃんの家はここらかなーって」

真面目で優しい健ちゃん。

「偶然顔でも見れたらいいなーって気持ちで仕事の帰りに散歩してたら……あっ!ストーカー!ストーカーじゃないからね、違うから嫌わないで」
もう顔を赤くして必死で言う。
そのひたむきな姿がいじらしくて
安心できて

私は健ちゃんの胸に、身体を埋めて抱きついた。
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