きっと上手くいく
「そこにいるのか?開けろ」
自分からドアを叩きながら
なぜに上から目線。
一枚の扉越しに私の気配がわかるのだろうか。
間違いなく和也だよね
小さなドアスコープから外を覗こうとしていたら
「まずは金属バットを下ろせ」
そう言われた。
間違いなく和也だ。
どうして今さら……。
ためらいが私の動きを止める。
「悪いオオカミじゃないから開けて」
今度は
うって変わっての甘い声。
思わず肩の力が抜けて笑ってしまった。
「お母さんが帰って来たよー。ここを開けなさいー」
私は子ヤギと違うぞ。
隠れる大きな時計もないよ。
「悪いオオカミかもしれないし」
「ちょっとマジで入れて。ひとつだけ聞きたい事がある」
聞きたい事?
心臓がピクリと跳ねる。
「ひとつだけ聞いて確認する。もうそれで終わり。納得したら二度と会わない。てゆーかお前の部屋の合鍵もついでに返したい。俺、そのまま持ってたからさ」
鍵……返してもらってなかったっけ。
私は玄関の鍵を開けて和也と対面。
すんなりとドアが開くと思ってなかったのだろう、和也は驚いた顔をしてから私の下ろしてる手元を見つめた。
「バットはいらない」
「ごめん」
久し振りに見る和也は少し痩せたようだ。
仕事はどうなんだろう。
上手くやってるのだろうか。
何かに追われるように走ったのか
服装も少し乱れている
彼はネクタイを緩め
私をジッと見つめる。