きっと上手くいく
「さっきデブに会った。そろそろ来ると思う」
「え?どうして?」
どうして
和也と健ちゃんが?
「偶然会って少し話した。アイツ知らなかったぞ。お腹の子供が自分の子だって」
責めるように言われた。
「俺が部屋を出て、お前がアイツと幸せにやってるって思ってたら……何?この流れ」
和也は腕時計をチェックし「ヤバい。デブが来る」って焦ってた。
「健ちゃんが来るの?」
驚いて聞くと
「そーだって言ってんだろ!
アイツが来る前に
お前の気持ちが知りたいんだよ!」
話が通じなくてもどかしいのか、和也は荒い声を出しながら靴を脱ぎ
私を抱きしめた。
「あ……悪い。苦しくない?」
いつもより柔らかく
お腹の部分に余裕を持って
優しく優しく私を包む。
「デブに言った『お前の子供だから千尋を大切にしろ。千尋を頼む。俺はもう二度と会わない』って。でも無理。それは無理。はっきりお前の口から『デブが好き』って聞かないと無理」
「和也」
小さく彼の名前を呼ぶと
彼はゆっくり私の身体を離し
真剣な表情で私の目を見る。
「就職なんてどうでもいいって思ってたけど、お前の顔が浮かんで面接に行った。奇跡的に受かってさ、今日が早めの忘年会でデブに会った。俺は奴にカッコつけて言ったけどアイツがタクシーに乗ってここに向かったと思ったら……」
「うん」
「すげームカついてさ」
吐き出すように和也は言う。
本当に……変わってないその態度
思わず吹き出して笑うと彼も微笑む。
優しい微笑みだった。