きっと上手くいく

健ちゃんが唇を噛み
目線を今度は私に移す。

怒りで身体が小刻みに震えてる。
そっと大きな身体を包んであげたいけれど

私は和也と並び
健ちゃんに頭を下げて

彼を

一気に突き落す。

「それが千尋ちゃんの返事なんだね」

声も震えている。

ごめんなさいしか言えない。
その
ごめんなさいも……申し訳なくて言えない自分が情けない。

健ちゃんを傷付けた。

私は和也を選ぶ。

「……もう……いいよ」

聞こえるか聞こえないくらいの小さな声を出し、ドアが開く音に続いて健ちゃんが玄関から出て行く気配を感じた。

「あ……」

和也の胸から離れて追いかけようとすると、和也の手が伸びてまた私を抱きしめる。

さっきより強く抱きしめる。

「ありがとう」

「でも……私」
やっぱり気になる。
でも和也は私をずっと抱きしめて離さない。

「俺が行く。お前は残れ」

「だって」

「待ってろ」
懐かしい和也のキスが私の言葉と行動を閉じ込めた。

「選んでくれてありがとう」

「……うん」

「俺、絶対お前を幸せにする。もう離さない。もう他の女と寝ない。夜の商売にも戻らない」

「うん」

「お腹の子はお前の子だ。お前の子ってー事は結婚したら俺の子だ」

「うん」

「心配するな。なんとでもなる。きっと上手くいく」

「うん」

「愛してる」

優しくもう一度唇を重ね
和也は極上の笑顔を見せてから「待ってろ」って健ちゃんを追いかける。

私はお腹を優しく触り
「パパがママを『愛してる』だって」

お腹の子供に教えてあげた。


健ちゃん……ごめんね。




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